髪の毛の主成分がケラチンというタンパク質で構成されていることは美容や健康に関心の高い層であれば常識中の常識として知られている事実であり、薄毛や抜け毛に悩む人々がこぞってプロテインを飲んだり肉や卵を意識的に摂取したりするのは極めて理にかなった行動のように思えますが、実はここに「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という古人の知恵が警鐘を鳴らす深刻な落とし穴が潜んでおり、良かれと思って摂取した過剰なタンパク質がかえって髪の成長を阻害し抜け毛を加速させてしまうという皮肉な現象が体内で静かに進行している可能性があることを認識しなければなりません。タンパク質を大量に摂取すればするほど髪がフサフサになるかと言えば人体のメカニズムはそう単純にはできておらず、摂取されたタンパク質はアミノ酸に分解されて吸収されますが、体内で一度に処理できる量には限界があり、その限界を超えた分は筋肉や髪になるどころか、窒素残留物という有害な老廃物となって体内を巡り、それを無毒化して排出するために肝臓と腎臓という二つの重要な解毒・排泄器官に甚大な負担を強いることになります。肝臓は髪の成長に必要なタンパク質の合成を行う工場でもありますが、過剰摂取によって発生したアンモニアなどの毒素を処理することにエネルギーとリソースを奪われてしまうと、本来の業務である髪の毛の生成や修復といった生命維持に直接関わらない末端の作業は後回しにされてしまい、結果として栄養が十分にあるはずなのに髪まで届かないという本末転倒な事態に陥ります。また腎臓への負担も無視できず、東洋医学において「腎は髪を司る」と言われるように腎機能の低下は髪の生命力に直結しており、血液中の老廃物をろ過するフィルターが目詰まりを起こせば血液は汚れドロドロになり、頭皮の毛細血管までスムーズに栄養と酸素を運ぶことが困難になります。さらに未消化のまま腸に到達したタンパク質は悪玉菌の格好の餌となり、腸内環境を著しく悪化させインドールやスカトールといった腐敗物質を発生させますが、これらの有害物質が腸壁から吸収されて血流に乗ると肌荒れや頭皮の炎症を引き起こす原因となり、土壌である頭皮環境が荒廃すればそこに生える植物である髪の毛も枯れてしまうのは自然の摂理です。現代のフィットネスブームや糖質制限ダイエットの影響でタンパク質神話が過熱していますが、自分の消化能力や代謝能力を超えた摂取は内臓というエンジンをオーバーヒートさせ、ボディメイクには成功しても頭髪という代償を払うことになりかねないため、自分の体調や便の状態、そして髪のコンディションを観察しながら「適量」を見極める知性こそが真の健康美を手に入れるための鍵となるのです。