髪の毛=タンパク質という等式があまりにも有名になりすぎてしまったため、多くの人が「タンパク質さえ摂っていれば髪は生える」という短絡的な思考に陥りがちですが、髪の毛の生成プロセスは家を建てる工事に似ており、タンパク質という木材やコンクリートが大量にあっても、それを加工する大工さんや釘や接着剤といった他の要素がなければ立派な家は建たないのと同様に、髪の成長にはビタミンやミネラルという補酵素が決定的な役割を果たしています。タンパク質であるケラチンを合成するためには、まず摂取したタンパク質をアミノ酸に分解し、それを再びケラチンとして再合成する必要がありますが、この再合成の工程において不可欠なのが「亜鉛」というミネラルであり、亜鉛が不足しているといくら大量のタンパク質があってもそれらは髪の毛になることができず、ただのゴミとして排出されてしまいます。さらに、アミノ酸の代謝を助けケラチンの合成をサポートするビタミンB6、頭皮の血行を促進し栄養を運ぶルートを確保するビタミンE、毛細血管を丈夫にするビタミンC、そして細胞分裂を活性化させるビオチンなど、多種多様なビタミン群が複雑に関与し合うことで初めて1本の健康な髪が生まれるのです。それにもかかわらず、肉やプロテインばかりに偏った食事をしていると、これらの微量栄養素が相対的に不足するだけでなく、先述したように腸内環境の悪化によって吸収率そのものが低下し、結果として「新型栄養失調」のような状態に陥り、髪は栄養不足で枯れ果ててしまいます。また、野菜や果物、海藻類に含まれる抗酸化物質は、体内で発生した活性酸素を除去し、毛根の老化を防ぐという重要な役割も担っていますが、タンパク質中心の生活ではこれらも不足しがちになります。したがって、髪のために本当に必要なのは「高タンパク食」ではなく「定食のようなバランスの取れた食事」であり、主菜(タンパク質)、副菜(ビタミン・ミネラル・食物繊維)、主食(エネルギー源としての炭水化物)が揃って初めて、摂取したタンパク質が有効に活用される土壌が整うのです。「木を見て森を見ず」にならぬよう、タンパク質という一つの栄養素に固執するのではなく、栄養素のチームワーク全体を俯瞰し、彩り豊かな食事を楽しむ余裕を持つことが、結果として艶やかで力強い髪を育むことにつながります。
髪に必要な栄養素はタンパク質だけではないという真実