あれは数年前、筋トレブームに乗じて「カッコいい体とフサフサの髪を手に入れよう」と一念発起し、体重の3倍グラム数という無謀な量のタンパク質摂取ノルマを自分に課してプロテインと鶏胸肉漬けの生活を始めた私が、まさかその努力が原因で洗面台を埋め尽くすほどの抜け毛に怯える日々を送ることになるとは夢にも思っていませんでした。当時の私は「髪の材料はタンパク質だから、摂れば摂るほど髪は太く強くなるはずだ」という単純なロジックを盲信し、朝起きればプロテイン、昼はコンビニのサラダチキン、間食にプロテインバー、夜は赤身肉のステーキという、腎臓と肝臓が悲鳴を上げそうな食生活をストイックに続けていました。最初の異変は体臭の変化とおならの強烈な臭いでしたが、筋肉がついている証拠だとポジティブに解釈して無視していたところ、次第に強烈な倦怠感に襲われるようになり、朝起きても疲れが取れず、肌はどす黒くくすみ、そして決定打となったのがシャンプー時の指に絡みつく大量の抜け毛でした。以前とは明らかに違う、根元が弱々しく細くなった抜け毛を見てパニックになった私は、ようやく自分の体に何が起きているのかを調べ始め、過剰なタンパク質摂取が内臓機能を低下させ、毒素が体中を巡っている状態であることに気づいたのです。慌ててプロテインを中止し、野菜中心のバランスの良い食事に戻し、水をたくさん飲んでデトックスを心がけたところ、数週間でおならの臭いが消え、肌の調子が戻り、それと並行して抜け毛の量も嘘のように減っていきました。この恐怖体験から私が学んだ教訓は、体には「適量」という絶対的なルールが存在し、どんなに体に良いとされる栄養素であっても、それを処理する臓器の能力を超えればそれは栄養ではなく「毒」になるという冷徹な事実です。今ではタンパク質は体重1kgあたり1.2g程度を目安にし、植物性と動物性をバランスよく摂るようにしていますが、髪の調子はあの頃よりもずっと良く、ハリと艶を取り戻しています。もしあなたが今、髪のために無理をしてプロテインを流し込んでいるのなら、一度立ち止まって自分の体の声、特に胃腸や便の状態に耳を傾けてみてください。あなたの髪を救うのは、過剰なタンパク質ではなく、内臓をいたわる優しさとバランスの取れた食事なのかもしれません。
タンパク質神話に踊らされて髪を失いかけた私の体験