初期脱毛という名の夜明け前
デュタステリドによるAGA治療を開始した人々が、最初に直面する大きな壁、それが「初期脱毛」です。効果を期待して飲み始めた矢先に、かえって抜け毛が増えるというこの現象は、多くの人を不安のどん底に突き落とします。しかし、この一見ネガティブな反応こそ、実は治療が順調に始まったことを示すポジティブなサインなのです。この現象を乗り越えるためには、まずそのメカニズムを正しく理解することが大切です。AGAによって乱れたヘアサイクルでは、多くの髪の毛が十分に成長できないまま休止期に入り、頭皮に留まっています。デュタステリドの服用が始まると、その作用によって新しい、健康で力強い髪の毛が毛根で生成され始めます。この新しい髪が成長する過程で、既に成長を終えていた古い髪の毛を押し出すようにして、抜け落ちさせるのです。これが初期脱毛の正体です。つまり、来るべき新しい髪の毛たちのために、古い世代が場所を譲っている、いわば世代交代の時期なのです。この期間は通常、服用開始後1ヶ月から3ヶ月頃に起こり、その後は徐々に抜け毛が落ち着いていきます。知識として理解していても、実際に日々抜け落ちる髪を目の当たりにすると、心が揺らぐのは当然のことです。この辛い時期を乗り越えるためには、「これは薬が効いている証拠だ」と意識的に捉え直すマインドセットが重要です。また、帽子をお洒落に活用したり、ヘアスタイルを工夫したりして、一時的に乗り切るのも良いでしょう。初期脱毛は、いわば夜明け前の最も暗い時間です。その先に待つ新しい髪との出会いを信じて、どっしりと構える強さが、治療の成功を大きく左右するのです。