僕が自分のつむじと向き合えた日
高校二年の夏だった。プールの授業の後、友達に「お前、そこのつむじ、やばくね?」と笑いながら言われた。冗談めかした口調だったけど、僕の心にはグサリと棘が刺さった。その日から、僕の世界は一変した。鏡で自分の頭頂部をスマホで撮影しては、ため息をつく毎日。授業中も、後ろの席のやつが俺の頭を見ているんじゃないかと気になって集中できない。帽子が手放せなくなり、性格まで内向きになっていった。親にも相談できず、ネットで「高校生 はげ 治る」と検索しては、怪しげな育毛剤の広告に心を揺さぶられる日々。そんなある日、父のドレッサーに、有名な育毛剤のボトルが置いてあるのを見つけた。その瞬間、僕は気づいた。僕と同じように、父も悩んでいたんだ。そして、一人で戦っていたんだ。その夜、僕は勇気を振り絞って父に話した。「実は、髪のことで悩んでるんだ」。父は驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情になり、自分の経験を話してくれた。そして、「一人で悩むな。気になるなら、一度ちゃんと専門の先生に診てもらおう」と言ってくれた。数日後、父と一緒に皮膚科へ行った。先生は僕の頭皮を丁寧に診察し、「AGAの可能性もあるけど、まずは生活習慣から見直そう」と、食事や睡眠について具体的にアドバイスしてくれた。特別な治療が始まったわけじゃない。でも、僕の心は驚くほど軽くなっていた。一人じゃない。正しい知識で向き合えばいい。そう思えたからだ。つむじの悩みが完全に消えたわけじゃない。でも、今の僕は前とは違う。この悩みとちゃんと向き合って、自分にできることをやっていこう。そう、まっすぐに前を向けるようになったんだ。