長年、多くのお客様の髪の悩みに向き合ってきましたが、頭頂部の薄毛に関するご相談は後を絶ちません。私がそうしたお客様にまずお伝えするのは、「隠すことは最良の策ではない」ということです。むしろ、その個性を魅力に変える「攻めの髪型」こそ、自信を取り戻すための最善手だと考えています。私が提案する最高のスタイルは、その方の骨格やライフスタイルに合わせてカスタマイズした「ベリーショート」です。具体的には、サイドとバックを潔く刈り上げることで、まず全体のシルエットを引き締めます。こうすることで清潔感が格段にアップし、視線が自然と顔の中心、つまり目元や表情に集まるようになります。薄い部分に注目させない、という視覚的なトリックですね。そして、問題の頭頂部ですが、ここは無理に長さを残しません。周囲の短さに合わせて、トップも短めにカットし、自然な毛流れを作ります。この時、セニングシザー(すきバサミ)で毛量を調整し、束感が出やすいようにカットするのがプロの技です。これにより、少ない髪でもスタイリング剤をつけた時に動きが出て、立体感が生まれます。スタイリングは非常にシンプルです。硬めのマットワックスを少量指に取り、トップの髪の根元から持ち上げるように馴染ませるだけ。この一手間で、髪が立ち上がり、一日中ボリューム感をキープできます。大切なのは、薄い部分を覆い隠すのではなく、髪型全体のバランスとデザイン性で勝負すること。潔さと清潔感、そして少しのスタイリング。これこそが、コンプレックスを洗練された個性へと昇華させる、最高のヘアスタイルだと私は確信しています。