僕がスマホでAGAオンライン診療を選んだ理由
三十歳を過ぎた頃からだろうか、シャワーを浴びるたびに排水溝に溜まる髪の毛の量が増え、朝、鏡の前に立つと、生え際が少し後退しているように感じるようになった。父も祖父も髪が薄かったから、いつかは自分も、と覚悟はしていたつもりだった。でも、いざ現実になると、その焦りと不安は想像以上だった。街中で人の視線が自分の頭頂部に集まっているような気がして、外出することすら億劫になりかけていた。AGA治療という選択肢は知っていた。しかし、専門のクリニックのドアを叩く勇気がどうしても出なかったのだ。待合室で他の患者さんと顔を合わせるのが気まずい。受付で「薄毛の相談で」と言うのが恥ずかしい。そんな小さなプライドが、僕の足を重くしていた。そんな時、インターネットの広告で「スマホでAGA診療」という文字が目に飛び込んできた。最初は半信半疑だったが、調べてみると、自宅にいながら医師の診察を受け、薬を処方してもらえるという。これなら、誰にも会わずに始められる。藁にもすがる思いで、一番評判の良さそうなクリニックのサイトにアクセスし、予約を入れた。予約した時間になると、スマホの画面に優しそうな男性医師の顔が映し出された。ビデオ通話での診察は思った以上にスムーズで、僕は画面越しに、ずっと一人で抱えていた悩みを打ち明けることができた。医師は親身に話を聞いてくれ、治療方針や薬の効果、副作用について丁寧に説明してくれた。診察後、数日で自宅に薬が届いた。小さな箱を開けた時、僕は「やっと始められる」と、深い安堵のため息をついた。スマホでのAGA治療は、僕のように一歩を踏み出せずにいた人間の背中を、そっと押してくれる存在だったのだ。