生活
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彼の印象を変えたのは髪型だった
営業部の佐藤さんは、真面目で仕事熱心な人物だが、どこか自信なさげな印象が拭えないでいた。その原因の一つが、彼自身が気にしている頭頂部の薄毛にあることは、周囲も薄々感じていた。彼はいつも、残った髪で何とか地肌を隠そうと、不自然なスタイリングをしていたのだ。その努力が、かえって彼の印象を疲れたものに見せてしまっていた。そんな彼がある月曜の朝、別人のような姿で出社し、オフィスは静かにどよめいた。サイドは潔く刈り上げられ、トップは短く整えられていた。いわゆるおしゃれボウズ、あるいはベリーショートスタイルだ。今まで隠そうとしていた頭頂部を、彼は堂々と開放していた。その変化は、想像以上に彼の印象を刷新した。まず、圧倒的な清潔感が生まれた。顔の輪郭がはっきりと見え、目鼻立ちが際立ち、以前よりもずっと若々しく、精悍に見える。そして何より、彼の立ち居振る舞いが変わった。背筋がすっと伸び、俯きがちだった顔は上がり、人と話す時には相手の目をしっかりと見るようになった。コンプレックスを隠すのをやめたことで、彼の中から迷いが消え、揺るぎない自信が生まれたかのようだった。その変化は仕事の成果にも表れた。彼の提案には以前よりも説得力が増し、クライアントからの信頼も厚くなったという。髪型が直接仕事の能力を上げるわけではない。しかし、髪型を変え、自信を取り戻したことで、彼が本来持っていた能力が最大限に発揮されるようになったのだ。彼の変身は、小さなコンプレックスへの向き合い方が、人生そのものを大きく変える力を持つことを、静かに物語っていた。