デュタステリドによるAGA治療を始め、その効果を実感し始めると、多くの人が次に抱くのは「この治療は、一体いつまで続ければいいのだろうか」という疑問です。これは、治療のゴール設定に関わる非常に重要かつ、時に悩ましい問いと言えるでしょう。この問いに答えるためには、まずAGAという疾患の性質と、デュタステリドという薬の役割を正確に理解する必要があります。AGAは、高血圧や糖尿病のような慢性疾患と似た側面を持っています。つまり、完治するという概念がなく、治療を継続している間だけ、その進行を抑制できるというものです。デュタステリドは、薄毛の原因であるDHTの生成を抑えることで効果を発揮しますが、これはあくまで対症療法です。服用を中止すれば、抑制されていたDHTの生成は再び活発になり、残念ながら髪の状態は数ヶ月から一年ほどで治療前の状態へと徐々に戻っていきます。この事実を踏まえると、理論上の答えは「効果を維持したい限り、服用を続ける必要がある」ということになります。しかし、人生は理論通りにはいきません。個人のライフステージの変化によって、治療の継続について考え直すタイミングが訪れることもあります。例えば、結婚し、子供を授かることを考える「妊活」の時期です。デュタステリドは精子の量や運動率に影響を与える可能性が報告されており、また、パートナーへの精神的な配慮から、一時的に休薬を選択する人もいます。最終的に、治療をいつまで、どのような形で続けるのかは、個人の価値観やライフプランに大きく左右されます。現状の髪の状態に満足できれば減薬を検討したり、ある程度の年齢で「自然な加齢を受け入れる」という選択をしたりするのも一つの生き方です。大切なのは、定期的に医師と相談し、自分自身の心と体の状態、そして人生の目標と照らし合わせながら、その時々で最善の道を選択していくことなのです。
この治療はいつまで続けるべきなのか